2011/05/03

みずき会に寄せて

2004年1月に横浜山手を描く小さな集いとしてYY会が発足しました。私が前年9月に出展した「チャーチル会ヨコハマ」の絵画展で作品を見た数名の女性から、「こういう透き通った風景画が描きたい。是非指導して欲しい」と懇望されました。人様にお教えするほどのものではないとお断わりしたのですが、それでもと請われて、ではフリースケッチでも・・・と云って元町公園でスタートしたのが、現在の「みずき会」の生い立ちです。

それから、7年を経て、離合集散はありましたが、今は24名のメンバーで毎月第2、第4の水曜、木曜に写生教室を開いています。水、木から「みずき」というネーミングも生まれました。



絵は楽しんで描くこと、あまり強い自意識を持たないこと、そして絵を離れて仲間と触れ合うこと。たまには旅に出かけて心からリフレッシュすること。など私なりのスタイルで1度も挫折することなくここまで継続できたことは信じがたいことでもあります。

勉強をして、それをダイジェストできたら、教室の皆さんに技法としてお伝えする。私はプロの画家ではないからこそそれが出来ると考えています。本当の画家さんの場合は、差別化という言う意味で、自分の持っている秘めた要素を、なかなか伝えようとしません。

本を読めば済む様な、基本的な原理だけを繰り返し、後は自分自身がそこで描いている絵からハウツーを盗めと言わんばかりのレッスンプロが多いのも事実です。生徒さんの方も絵が進化しないのは、教えてくれない先生のお蔭と教室を渡り歩く人もいます。先生に転嫁すれば済むという話ではなく、やはり自分の気持ちの持ちようと絵と向き合う姿勢だと思います。

先生は地図と羅針盤は持っていますが、目標に向かって遠い道のりを歩いて行くのは自分自身です。 そして迷い道だらけの絵の道は、極限のない人生そのものであるような気がします。それがたとえのんびりとした趣味の領域であっても、一定の成果や達成感を伴ってこそ自分を知ることが出来ることとなります。



私はいつまで「みずき会」を発展的に維持できるか分かりません。然し今はまだ心、技、体のバランスが保てているようで、ストレスもありません。いつまでにどうしようという強い目標や目的は持たないようにしています。仮にそこに到着すると本当に完結したと錯覚するかもしれないからです。

今は嘗て私独りが釈迦力に気負ってやっていた時と違い、幹事会という機能があって、どんなことも知恵を出し合い、隔たり無く論議して,進路を決めています。私は極言すれば、技術職に専念すればよいわけです。然し休んだり,呆けたり、腕が落ちたりしてはその職を失うこととなります。それといつも大事にしているのは話術です。

私は教室の現場では絵を描きませんので、アドバイス、画評など言葉で伝えることが殆どです。 いつも言葉は起承転結で、できるだけわかり易く、大きな声で歯切れ良くを心がけています。この点はその道のプロである二人の弟から教わるところ大です。



昨年私にとっては10年ぶり9回目の「コッツウォルズへの12日間旅スケッチ」という偉業を成し得ました。しかもみずき会の皆さんを始め20人のグループで思い出に残る楽しい旅が出来たことは、私にとって画期的なことでした。未だやれるという自信を得たことです。そして宿願であった個展(水と油の夫婦展)へとコッツウォルズの作品を繋げることが出来ました。

この夫婦展は「みずき会」というかけがえの無いバックグランドとひたむきな皆さんのサポートがあってこそのものでした。やがて起きる空前絶後の出来事の直前であっただけに
本当にやれて良かったと感慨もひとしおです。

私の水彩画の原点はコッツウォルズの原風景です。いつ訪れても変わることなくそこに広がる優しい自然と古い家並みには、絵心をそそられずにはいられません。

19世紀初期の英国自然主義画家・ジョン コンスタブルが生まれ育ったイーストアングリア地方も忘れがたい風光に満ち、今なおコンスタブルが描いた当時の村が残っていて、私も旅で絵筆をとった場所です。
私はアルウイン クローショー、ジョン リジー、デビット ベラミー、デビット カーチスなどのイギリスの透明水彩画家の影響を受けながら自分の画風が出来上がってきたと思っています。

然し、私は最近アメリカのマリリン シマンドルという女流水彩画家の研究を続けています。若かりせば彼女の住むカリフォルニアのサンタ イネズに飛んでいってワークショップに入りたい気持ちです。技法書(英語版)やWebで情報を取りノウハウを習得中です。

勿論こんな方法でその域に及ぶことは不可能です。それでも少しでも彼女の水彩画に対する考え方、技法を理解しようとするプロセスが大事だと考えています。彼女の光と影の水彩画は私が蓄えている知識に付け加えるべき洞察と技法に満ちています。

私は自分なりに吸収したものをみずき会の皆さんに伝えて行こうと考えています。

これまで多くの作家の技法書や作品を見て、感動や啓示を受けてきましたが、また一つ仕上げと思えるような仕事が増えました。


2011年4月の「第3回みずき会水彩画展」の記録をWebサイトに公開します。代表作1点ですがどうぞ会員の皆さんの光り輝く作品をご覧ください。 

2011年5月
羽佐間 英二