2010/01/21

大衆演芸に感動す

16日に恒例の3兄弟新年会がありました。今年のアトラクションは寄席をということで、チェックをしていましたが、どうも気に入るものがなく、今流行の3D映画にでも行こうかと相談していました。
数日後、横浜の場末に「三吉演芸場」というのがありそこで「春陽座」というのが公演しているらしとの情報が入りました。何となく聞いていたのですが、とにかく下見をしてみようと現場下調べに直ぐ出かけてみました。
「阪東橋」という地下鉄駅で下車「横浜橋通商店街」という活気溢れるアーケードを通り抜けたところに想像以上の立派な建物が目に飛び込んできました。小さな小屋程度のイメージだったので、これに驚き直ちに、ここに決めた!となりました。以下所感をブログ用にまとめました。


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 過日恒例の三兄弟新年会で、大衆演劇 「春陽座」の公演を観た。


メインのお芝居は鬼平犯科帳の中から「般若と菩薩」の一幕三場の単純な構成であり、舞台も簡素な設えで田舎の芝居小屋といった感じ。眠くなるのでは・・・の予感は冒頭の火付盗賊改方 長谷川平蔵(テレビでは吉右衛門のはまり役)の登場場面から消し飛んだ。

放火殺人犯のお仙という女を処刑すべく西方から江戸に向かう途中、立ち寄った旅籠での出来事である。ここでお仙は離れ離れになっていた仙吉というわが子とふとしたことで再会の機会が訪れる。人殺しの子といじめられていた仙吉は母恋しの再会で親子は抱き合って涙ながらに喜びを分かつ。(このあたりの情景でこちらもうるうるとなる)

お仙はせめて江戸までの10日間を仙吉と共にしたいと平蔵に懇願する。平蔵は”それはならぬ。見るも無残な姿で処刑される母の姿をまぶたに焼付け、息子仙吉は一生を送ることになる。”として泣いてすがるお仙の思いを聞き入れない。

仙吉が場を離れているわずかな間に「仙吉を預かりわが子として立派に育てるのでお前はここで胸を突いて果てろ、今すぐにだ」とお仙に迫る。お仙は笑みを浮かべて自ら命を絶つ。そこに戻った仙吉は短刀を胸に突き立てた母の変わり果てた体に身を沈め 「なぜだもうずっと一緒だと約束をしたのに母ちゃんのうそつき」と泣き叫ぶ。平蔵は静かに仙吉をいたわりながら幕は下りてゆく。


こんな芝居なのだが、皆泣いてしまった。プロの役者の羽佐間道夫が涙が止まらないほどの芝居であった。これは本物だと感じた。この主役3人の演技は見事であった。そして私は、平蔵のような、般若のような厳しさの中に菩薩の心を持つリーダーが少ないことを痛感していた。

ところでこれを機会に大衆演劇を調べてみたら200程の劇団が登録されていることが分かった。「春陽座」のように殆どが家族や一族で構成し厳しい練習、修行を重ねている。私が驚いたのは芝居のレパートリーの多さである。今回の「春陽座」もこの1月公演で一日として同じ演目の日はない。日替りで同じ客を集めるという手法かもしれない。

大衆演劇の要素をまとめてみた。

1、お芝居のストーリーが単純であること
2、セリフが短く判りやすいこと
3、笑いを誘い、一方で泣けること
4 役者が余り洗練されず泥臭いこと
5、入場料が安いこと

三吉演芸場は昭和5年にその源があるらしい、昭和48年に正式に立ち上げ、平成10年に今の立派な建物が出来上がったという。清潔感溢れる良い劇場だと感じた。

帰路の「横浜橋通商店街」が面白い。500mのアーケードの左右にお店が隙間なく立ち並び京都の錦市場の感じである。往きに見当をつけ、帰りに買い物を薦める。安くて良質の買い物が出来る

大衆演劇と庶民の市場・・・いつもとは一味違う新年会であった。