2012/09/01

人生色々こぼれ話(20) イギリス旅スケッチ行状記(2)


人生色々こぼれ話(20)
イギリス旅スケッチ行状記(2)

美しい丘「バーレイコート」4日間の田舎暮らしは捨てがたい趣があった。ここを拠点としてバスで出かける日替わりスケッチも意外性があり、旅情に富んでいた。

ここを出立する5日目(74日)の朝も雨模様ですっきりしないけど、次の目的地「バース」に向かう中間地点で「ミサーデンガーデン」という気品あふれる庭園を訪れ終日のんびりと過ごすプランであった。


ミサーデン村の中に絶好のスケッチスペースを見つけた。見上げるような巨木(アメリカスズカケの木)を囲んでベンチがあり、木を取り巻くように屋根が張り巡らせてあるのだ。
10数人は収容可能である。まるで私たちのために用意してくれた特設の「あずまや」といえる。
360度のアングルがチョイスできるし、心地よい会話も弾む。相変わらずKさんが主役である。
猫が自分の居所を占拠されたためか不思議そうな面持ちで訪れるが、すぐ仲良しになったようである。


この方式は、横浜での教室でも応用できそうだと直感した。何よりも楽なのはアドバイスする私である。指導の濃度も高く、他の人も話が聞こえる。椅子を逆に向ければランチのサークルができる。5人での「ペンタゴン方式」とでも名付け一度試してみようかと思っている。



目の前の洒落たパブで軽い美味ランチのあと、雨も上がったので2作目に取りかかる人もいる。
パラソルの立ち並ぶこのパブは美しく絵になる外観でTさんが描いていた。


3時からはガーデンでのアフターヌーンティーである。この庭園のスケールは東京ドームほどで、良く手入れされた庭園と佇むマナーハウスの美しさに目を奪われた。
貴族の邸に迷い込んだように道を進むとハウスの一角にテラスがあり、ティーと数々のケーキがセットされていて、私たちは目の当たりの景観を独り占めにして贅沢な時を楽しんだ。前日から準備されたというご家族の皆さんのご親切と誠意に感謝しつつガーデンを後にした。



後半のベースキャンプは五つ星の「バース スパホテル」で今日から同室はYさんである。使い勝手の良いツインの部屋である。山小屋風からプレミアムに昇格した感じである。

田舎町を離れてバースにつくと大聖堂を中心とする壮大な世界遺産の町の偉容に目を奪われる。18世紀にイギリスの上流階級が集った町であり、粋を凝らした建築物が多く立ち並び壮観である。私はエイボン川」にかかるパルティニー橋周辺が好みのスポットである。


日本人の来訪は私たちが初めてという超田舎から、観光客の溢れる華やかなバースにつくと一時はおのぼりさん気分になる。夕暮れ時の中心市街地を早足で15分ほど歩き目指すビストロにつく頃はへとへとでビールのサーブを催促する始末である。
とにかく一行15人元気で後半の旅スケッチをスタートした。



咋夕から天気が回復しメインの「カースルクーム」は絶好の日和となる。「バイブリー」の
「アーリントン ロー」と同じくイギリスで最も古い家並みを残している村である。


実は私のこのブログのトップページに出てくる絵がこの村のベストアングルだと思えるが
今では私有地につき立ち入り禁止で、写真も厳禁であった。ガーデンを始め私有地を公開してくれるのがイギリスの美風だと理解している私にとってはとても残念でならない。
何か出来事があったのだろうが、絵を描いてはいけない鎌倉の神社仏閣を思い出してしまう。


場所を変えながら、皆 終日のんびりと筆を走らせることができた。
広い庭のあるザ・マナーハウスというホテルでのサンドイッチは好評であった。庭でこのホテルを描くという条件でのランチであったが、誰も描かなかったようである。


Koさんの周囲には人だかりがした。ドイツの少年達がはやしたて彼女はスパッタリング
(筆に絵の具を含ませ点々と画面に散らす技法)のデモをしたという。
やんやの喝采を受けた。国際交流の微笑ましい一幕である。



この日は遠征でもあったので会食はパスし、各自自由とした。
私たち男性4名は町なかのトイレ探しと、翌日の中華料理屋の下見に出掛けた。
トイレ探しは困難を極めた。3人の男性に聞いて(エクスキュズミー ドゥ ユー ハブ
トイレット ニャー バイ?・・・こんなことさすがに金髪のレディには聞けないね)広範囲のエリアからやっと一つ探し当てたものの10分操業、10分清掃の珍しいトイレでこれは役に立たずの判定、一つは故障でクローズドの状態であった。


5時半 閉鎖のガーデン内(入場料つき)のトイレがベストで、このガーデンを翌日午後の写生場所にしようという選択になった。トイレあっての写生地というのは日本でも体験済みなのだが、不慣れな中での選定には苦労した。この間ホテルを出て2時間近くの難行であった。
佐々木さん(ツアー ガイド)には田舎のトイレだけは事前に徹底的に調べてもらったのだが手落ちであった・・・・。(実は彼女もバースの町なかでのトイレは知らなかった)

さて中華屋がとてつもなく遠いのである。市街地を抜け、橋を渡り、川岸を歩き、橋をくぐり、草の茂る裏道をたどり、車道に出て信号を渡り、空き地を突っ切り、また歩道に出て、右側の店である。今でも完璧に行けるけど、絶対に行かない!! 要は味に特徴がないから。


この間、わが女性達はプールで水浴びをし、その後は盛大に女子会を開催したという。
文化度が違うのか、無頓着なのか、女性の時代はここにもあった。
然し私は日ごろ決まった人とだけ接触しがちな女性の皆さんが誰かの呼びかけで全交流
をしたことが嬉しかった。その後何も提案がないのは単なる笑い話の会であったのだろうが、旅ならではの形を見た思いである。



翌日は市内を流れるエイボン川での班別の写生である。午前中は天気もまあまあであったが午後は予め決めていたトイレつきガーデンに移動した。美しい庭から眺める建物はどこからでも絵になった。雨が降ってきたので、これを避けて掩蓋のある絶好の場所に移り終日描き続けた。
幸運にもその場所はトイレにも至近のロケーションであった。


不思議な事件はその朝起きた。15個頼んだランチボックスの中のサンドウイッチが4
のボックスに入っていないのである。納入業者→ホテルフロント→受け取り→配給のルートであるが、消失原因の証拠はない。多分、受け取りの間に裏方の皿洗いか掃除の女性が失敬したのだろうという想定である。業者から直接受け取ればよかったという反省もある。


中華屋までの道は前日実証済みなので問題はない。特別の名店ならまだしも、こんな場末
の店なら余程の味でなければ来ないはず。予約済だったのでやむを得ずということであるが、蛙やカタツムリの料理が出てきそうなところを事前に拒否したのは我ながら殊勲である。イギリスではロンドンを除いて他の都市では中華料理を食すべからずの教訓。


出発前日はショッピングと観光であるが、この日も雨。午前中は安息日とし午後から町へ繰り出す。土曜日なので大変な人出で有名な建物や施設の入場は長蛇の列である。

買い物で皆さんに人気があったのはチャールズ皇太子の経営する「ハイ グローブ ショップ」という店である。「テトベリー」という町に本拠を置くのだが皇太子の農園で作られたオーガニック食品や生活雑貨、ガーデニング用品等が並べられ、店内は大賑わいである。
わが部隊も購買意欲旺盛で、紅茶のブレンド、ビスケット、オリジナルバッグ等を買い求めていた。売上げの収益金はすべてチャリテイとして寄付される仕組みとなっているので間接的に社会貢献している気持ちになれる。



画評会はディナーの特別室で開いた。皆さんの1点ずつの絵は出来たての新作でそれぞれが輝いていた。心地良い雰囲気で私は美術館のキュレーター(学芸員)のような気分であった。こんなフィーリングで画評が出来る幸せを身に沁みて感じていた。


この演出の後の晩餐会は素晴らしかった。このホテルでのたった1回のディナーだったので味わいが格別だったのかもしれない。
和やかな語らいがいつまでも続いた。


花火のスターマインのように華やかで彩りに満ちたフィナーレのときめきを感じつつわが旅は終わりの時を迎えていた。                    以上

(自分自身では10回目のイギリス旅行でしたが、2010年、2012年と続けたコッツウォルズの旅スケッチは人生を通して忘れがたいメモリーとして残り続けることでしょう。
 これが最後の旅と思わないで、何時かはあれが最後だっかとしみじみ思えるように良い旅を重ねたいと思っています。)